ここでは火災保険の補償内容について解説します。戸建てとマンションでは想定されるリスクが違います。前回の「戸建て編」に続き、今回はマンションの場合のポイントを解説します。
マンションには2つの火災保険が必要!
マンションはまずここを理解する必要があります。
◆共有部分(外壁、廊下、エントランス、エレベーターなど)
⇒ 管理組合が保険に加入(マンション総合保険など)
◆専有部分(各戸室部分)
⇒ 個人(区分所有者)が保険に加入(個人用火災総合保険など)
つまり、物理的に共有部分と専有部分に分けてそれぞれ保険に加入するので、「うちは管理組合が火災保険にはいっているから大丈夫!」と思ったら大間違いです。
専有部分であるあなたの家は、自分で火災保険に加入して万一に備えなければなりません。
マンションにとっては「漏水保険」
マンションは漏水、つまり水漏れが多い!しかもここ数年でどんどん増えています。
水濡れ損害の支払い状況(PDF)
2019 損害保険料率算出機構 「火災保険・地震保険の概況」より
支払件数でも3番目です。支払額では火災の次に多く、水漏れと言っても損害額はかなり大きくなることがわかります。
水漏れの「被害者」になったとき
自分が水漏れの被害者になった場合、火災保険の「水濡れ」補償でカバーできます。
水漏れの原因が自分のときでも、上の住人が原因のときでも、自分の火災保険は使えます。が、上の住人が原因の場合は、その人から賠償してもらうのが普通です。法律上の損害賠償責任があるからです。
共有部分からの水漏れの場合も同じです。共有部分は管理組合の持ち物ですから、管理組合から賠償してもらいます。管理組合も保険に入ってますよね。
ただし、賠償金額は法律では時価額までで良いとされているため、保険会社の賠償金額も時価額が限度です。購入して何年もたっている家具などは、新品を買う金額はもらえないでしょう。
その場合は自分の保険が「新価」払いの保険であれば、同程度の新品を買う金額との差額を請求できるのです。
水漏れの「加害者」になったとき
自分が水漏れを発生させて、下の住人に損害を与えた場合は、自分が賠償しなければなりません。
ところが火災保険は、自分の「モノ」の保険ですから、主契約には賠償する機能はありません。
そのため「個人賠償責任特約」というものがあります。法律上の賠償責任を負った時に、この特約でカバーすることができます。(次の記事で詳しく解説します。)
この場合もやはり時価額での賠償となります。被害者には自分の保険会社にも連絡してもらうようにしましょう。火災保険に加入していれば、ですが・・・。
家財には「盗難」「不測かつ突発的な事故」を
意外と盗難の話しはよく聞きます。過去に空き巣に入られた方、最近入られそうになった方(この方はドアの窓ガラスだけ割られた)。
家財の補償があれば、20万円以内の現金の盗難も補償されます。30万円以内の貴金属や美術品なども対象です。
30万円以上の貴金属類は申込書に明記して「明記物件」として取り扱うと補償の対象になります(2020年7月時点での規定)。ただし、支払は時価額となりますのでご注意を!
「不測かつ突発的な事故」とは、なんとも抽象的な補償内容ですが、こいつがなかなか使えます!
- 化粧品のビンを落として洗面台にひびが入った!
- ドアを開けたら勢いよく風が通り液晶テレビが落っこちて壊れた!
- 子供が遊んでるときにぶつかって家具が壊れた!
などなど、特に家財も補償の対象にした場合はグッと補償が広がります。
1階じゃなければ「水災」は外してOK
「水災」とは床上浸水と土砂崩れのこと。一般的にはマンションの2階以上なら水災の補償はあっても意味がありません。補償の対象外にすることによって保険料を安くできます。
保険会社によっては水災のみ外すことができない場合があるので要注意!漏水の補償も無くなってしまうかも。
また、堤防のすぐ脇に立っているマンションや傾斜地に立っているマンションなどは、2階以上とはいえ水災を外していいものか慎重に検討しましょう。
まとめ
マンションの補償内容のポイントをまとめます。
- 管理組合の保険は「共有部分」のみ。「専有部分」である自分の家は自分で火災保険に加入する必要がある。
- マンションはとにかく水漏れに注意! 被害者でも加害者でもカバーできるように「水濡れ」補償と「個人賠償責任」は必須。
- 家財には「盗難」と「不測かつ突発的な事故」が有効。
次の記事「特約火災保険が満期になるあなたへ⑤」では、マンションには必須の特約「個人賠償責任特約」について解説します。
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